/No.5 こころを打つDM Direct Message


田中 広幸 TANAKA Hiroyuki

 
 
 the human race in words(古 書)



 





■この作品は、人名事典を加工したものです。多くの人物が掲載されている中から三者を選び、
 肖像写真の位置までのページを慎重に切り抜きました。一ページずつ切り取る作業の中で、
 私の手元には、おびただしい数の脈絡を欠いた文字の集積と寸断された肖像が残りました。
 この三者の学術的、文学的功績の卓越は言うまでもないことです。しかしそれは、完全な
 オリジナルとして他に隔絶して彼らが手中にしたものでは決してなく、先行する研究や実践、
 そして同時代の人々との関係性の中で、偶発的要素もおおいに影響しながら生まれ出たもの
 に違いありません。
 「哲学者、それは少しは大きな郵便局である」とは誰の言葉だったでしょうか。人から受け
 取った言葉に切手を貼り、再び発送する。哲学者に限らず、言葉、文字を介して思考するこ
 とを宿命とする私たちの営為は、すべからくこのようなものであるはずです。
 私の手元に残ったページと文字の集積が、言葉と文字という極めて特異な制約と共に生きる
 人間の、その制約ゆえの逆説的な豊饒な達成を教えているような気がしています。
 シニカルな相貌をまとうことになったこの作品を、肖像の三者と、人名事典に掲載された他
 のすべての人々へのDMとしたいと思います。

■1960年 滋賀県に生まれる。
 1982年 滋賀大学教育学部卒業。
 「言葉」「文字」などをテーマに、古書を用いたインスタレーションや古書を加工したオブ
 ジェの制作に取り組む。
 1982年より個展を中心に発表。 


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