+1art
 
ARCHIVES |2020  |2019 |2018  |2017  |2016  |2015 

 


no.11
2016 05/12(水)ー 06/19(日)

クレジオ、耕衣、九条 
Clezio, Koi, Article 9  今井祝雄 IMAI Norio






関連イベント   5/14(土) PM 4〜 (参加費無料・要予約/定員20名)


 ・アーティストトーク
 ・パフォーマンス『ことのは散華ー音に』
    今井祝雄+宮嶋哉行(バイオリン)
 
            




今井祝雄
IMAI Norio


いま、この文章を読んでいるあなたは、文字に目を走らせてはいるけれど、文字そのものを見てはいない。読んでいるのである。読めるがゆえに見ることをしないのである。と、ここまで読んで今しばし、この文字を見ておられるかもしれない。が、また読み進めるうちに見ることを忘れ、読み続けていくにちがいない。(…) 読める文章が読めなくなったとき、それは “見る” ことを要請する。(今井『白からはじまる―私の美術ノート』246頁、ブレーンセンター2001年)
昨年、とある印刷所で60年前に製造された活版印刷機の埃を払って稼働してもらい、15年ぶりに文字による紙作品を制作した。憲法九条の120字を、重ね、ずらし、反転…。普通ならボツとなるさまざまな方法に加え、活版ならではの空刷りにフロッタージュを施したりして、読みづらく、あるいは判読不能な数々の作品ができた。そもそも高校時代に現代美術を意識した最初の拙作は、文字がひしめく新聞紙の上にステンシルで数字を散りばめたものだった。
ほどなく「具体」に参加して白いレリーフをつづけたが、同会が解散した1972年、愛読していたル・クレジオの小説から『三つの頁』ならびに『三つの見開き』を、2001年には俳人・永田耕衣の文学碑を手掛けた折の句を一字ずらし、五・七・五の3分節を3原色で、いずれもシルクスクリーンで刷り重ねた。
私の場合、変わらない興味や関心が形を変えながら、ひとつの手法として反復することが少なくないが、そんな時を隔てた「クレジオ、耕衣、九条」を、今回、一緒に並べることになった。いずれも印刷とはいえ、ほとんどエディションがなく、紙の上の出来事というべき読めない記述の集積である。目を凝らし、耳を澄まし、考えつづけることが困難な現代において、あえて、読めない、読みづらい字面を凝視することから何が読み解けるだろうか。

今井 祝雄


略歴
1946年、大阪市生まれ。元、具体美術協会会員。1966年、第10回シェル美術賞一等賞受賞。以来、
内外の展覧会に出品多数。関西文化学術研究都市などのパブリックアートや住吉万葉歌碑、永田耕衣
文学碑を制作。1979年より毎日の自写像『デイリーポートレイト』開始。著書に『白からはじまる
―私の美術ノート』、『タイムコレクション』ほか。
現在、テートモダン/ロンドンで開催中のperforming for the camera展に出品。


主な活動歴
1964 個展:17歳の証言(ヌーヌ画廊/大阪)
  第14回具体美術展(高島屋/大阪)
1965 具体美術協会会員(1972年解散まで全展出品)
1966 第10回シェル美術賞展1等賞(東京、京都)
  空間から環境へ(松屋/東京)
1967 第5回パリ青年ビエンナーレ(パリ市美術館)
  万国博美術展(万国博美術館/大阪)
1972 3人の心臓音による街頭イベント(御堂筋/大阪)
  映像表現 '72(京都市美術館)
  日本グラフィックアート展=The New Graphics from Japan(ICA、ロンドン)
1974 インパクトアート・ビデオアート '74(ギャラリーインパクト/ローザンヌ;スイス)
1982 第4回シドニービエンナーレ(オーストラリア)
1983 現代美術による写真(東京国立近代美術館および京都国立近代美術館)
1985 現代のセルフポートレート(埼玉県立近代美術館)
1988 日本先端科技藝術展(台湾省立美術館)
1993 具体Ⅲ 1965-1972(芦屋市立美術博物館)
1994 時間/美術ー20世紀美術における時間の表現(滋賀県立近代美術館)
  戦後日本の前衛美術(横浜美術館~グッゲンハイム美術館サンフランシスコ近代美術館を巡回)
1996 BACK & FORTH 今井祝雄・白の空間1964-1966(ギャラリー16/京都)
1997 <私>美術のすすめー何故WATAKUSHIは描かれたか(板橋区立美術館/東京)
2004 結成50周年記念「具体」回顧展(兵庫県立美術館)
2007 ラディカル・コミュニケーション:日本のビデオアート1968-1988(ゲティセンター/ロサンジェルス)
2009  ヴァイタル・シグナルー日米初期ビデオアート
               (ジャパンソサエティ/ニューヨーク、ボストン美術館ほか~2010)
  個展:今井祝雄-白のうちそと(楓ギャラリー/大阪)
2010 今井祝雄・耕衣重奏(LADSギャラリー/大阪)
  かたちのちから‐高度成長期の美術篇(大阪市立近代美術館(仮)心斎橋展示室)
2011 個展:フレーム考(LADSギャラリー/大阪)
  個展:フレーム・イン(CAS/大阪)
  Nul=0. dutch avant-garde in an international context,1961-1966(スキーダム市立美術館/オランダ)
  Masked Portrait Ⅱ -When Vibrations Become Forms(マリアン・ボエスキー・ギャラリー/ニューヨーク)
2012 「具体」ニッポンの前衛 18年の軌跡(国立新美術館/東京)
2013 Gutai:Splendid Playground(グッゲンハイム美術館/ニューヨーク)
  個展:白のイベント(Axel Vervoordt Gallery/アントワープ/ベルギー)
  個展:オン・ザ・ピアノ(ギャラリーあしやシューレ)
2014 個展:白の遠近(ギャラリー・リチャード/ニューヨーク)
2015 PROPORTIO(フォルチュニー美術館/ベニス)
  Re:play 1972/2015ー「映像表現'72」展、再演(東京国立近代美術館)
2016 performing for the camera(テートモダン/ロンドン)
  個展:白のイヴェント×映像1966-2016(ユミコチバアソシエイツ/東京)
  ライヴ・パフォーマンスとしての映像(東京都庭園美術館)
  個展:Retrospectiveー方形の時間(アートコートギャラリー/大阪)






「クレジオ、耕衣、九条」というタイトル名を今井氏から聞いたのは昨年のことだった。+1artで開催していた「ささやくエントロピー」展を見に来られた今井氏がふと漏らした言葉に強く興味をそそられたが、その時は詳しく聞く時間はなかった。それ以来ずっと気になっていた「クレジオ、耕衣、九条」展を+1art で開催することになった。
憲法をめぐるニュースに接することが多い昨今だが、今井氏の新作である「九条」作品はいわゆる憲法論議の外にある。近代遺産といえる活版印刷機で作られた読めない(読みにくい)憲法九条は、条文の〈解釈〉ではなく、対象を〈視る〉ことを要請している。
反復しながら変容する事象の中で、過去と現在が呼応する。しかと目と耳を開き、この「今」を見届けたい。

+1art カワラギ 









<