山に入り、座り、周囲を眺めてみる。自身の制作の態度はここから始まる。
長い時間木々や葉を眺めていると、そこに法が通っていることに気付く。
眼に見えない法則、また自身の中に培われた古人の眼差し。
それらは私の眼の網膜と、見られる場所とのあいだに漂う霊のようなものであろう。
そのような場所を描くには時間がかかる。葉の集積はその場所が形成された時間の集積であり、
かつてこの土地を眼差した古人の眼の集積であり、自身が絵の表面に痕跡を残し続けた時間の集積でもある。
その自身とともに「趣く」時間もまた、霊なのではないだろうか。
今回は「見る態度」が一つのテーマである。個展のタイトルは六朝時代の画家、宗炳の手による画論『画山水序』の冒頭の一節を、自分なりに少し改変したものである。自身の上記のような思いと、はるか古人である画家の考えに同じところがあることを嬉しく思い、今回このようなタイトルにした。 |