■金沢美術工芸大学卒業後、1995年よりメキシコ在住。
現在ベラクルス州立大学造形美術研究所教授。
辻調理師専門学校を卒業し調理師として働いていた経歴を持ち食をテーマとした
作品やワークショップ等も行っている。
■学生の頃から石を彫り続けている。石と長いこと関わっていると色々と考えさせ
られることがある。例えば石を彫った時に出る粉は石なのか。運動場にある砂場
の砂は石と言えるのか。砂利はどうなのか。我々はどのくらいのサイズから石と
呼ぶのだろう。石の他に彫刻の素材となる木には植物としての形が在るが、石に
は岩山のような大きな石から川石のような小石もあり、とくに決まった形がない。
石の形とはいったい何だろう。くだらないことかも知れないが、そんなことを真
剣に考えることもあるのだ。
川の石が生成するのにはどのくらいの年月が必要なのだろうか? 川石の一つ一つ
の形やテクスチャーは、川の流れの中で石と石とがぶつかり合い構築されていく。
この営みは何世紀もの間の絶え間ない運動の集積の結果である。私はその川石を
模倣するためにそれと同じ素材の原石から川石を掘り出し研磨する。何世紀もか
けて形成された形を数日の間に私の手の中で川石が誕生する。一見、作り出され
た川石も単体で見ると一つの川石に見えるが、まぎれも無く人の手によって作り
出された彫刻であり、この彫刻のモデルとなった川石が存在して、はじめてこの
川石の彫刻の意味をなす。しかしここに並ぶ1つの石を除いて全てオリジナルか
らのコピーなのですが、全て石であることには違いないのである。 一見同じよう
に見えるが、手に取って観るとじつに個性的であることが分かる。
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