ARCHIVE no.38
faint noise
山本雄教
YAMAMOTO Yukyo
2019
山本 雄教
YAMAMOTO Yukyo
「一枚の葉っぱが手に入ったら、宇宙全体が手に入るでしょう」(日本画家・安田靫彦) この言葉のように、些細な対象と社会や世界が繋がり、ミクロとマクロを行き来するような作品を作ることができないかと考えています。 かすかな雑音を意味する「faint noise」と題した今展の作品は、いずれも紙にわずかな凹凸を施すなどの、近づいて目を凝らすことで見えるようなものばかりです。 見ようとしなければ見ることができない、それは例えば、足元に落ちた葉っぱに目をやるようなことかもしれません。 かすかな雑音のような白い画面に、何かを見ることはできるのでしょうか。
山本 雄教
1988年生まれ
2010年 成安造形大学 日本画クラス卒業
2013年 京都造形芸術大学大学院修士課程ペインティング領域修了
近年の主な個展
Fake blues(+1art、2016)、 見立てと反復(ギャラリー和田、2017)、
××××円の人(ギャラリー恵風、2017)、THE PEOPLE(大雅堂、2017)、
青いテントと五つの輪(YOD Gallery、201)
主な受賞・入選
京都府美術工芸新鋭展公募部門大賞
美術新人賞デビュー2013準グランプリ
TERRADA ART AWARD 優秀賞
第7回トリエンナーレ豊橋星野眞吾賞展審査員推奨
ファインアート・ユニバーシアード U-35優秀賞
2018年第7回東山魁夷記念 日経日本画大賞展入選
その他個展、グループ展等多数
聞くところによると、ネット上ではバーチャルYouTuberが登場し、ますます仮想と現実の距離が縮まっているようだ。もともとヒトは仮想の対象や価値を求める傾向がある。神や美とか。貨幣も、その一つだろう。紙幣そのものは紙切れに過ぎない。山本雄教は1円玉を使ってドル・円の紙幣や有名無名の絵画・人物をフロッタージュで描写するシリーズを作ってきた。そこには本来の価値とはなにか?と問う山本のシニカルなユーモアを感じる。 faint noiseと題された本展では、一見何もない白い画面のように見える作品が並ぶ。だが近づいてよく見れば、表面にかすかな凹凸を施されているのがわかる。鑑賞者は、光が画面に作り出す陰影の美しさに見とれながら、戸惑いを感じるだろう。私は何を見ようとしていたのか? 自明という仮想の中で生きている私たちのこころに、山本は微かな雑音を立てる。その雑音(凹凸)は、ふだん使われない極小の小片でできているらしい。山本はいつもユーモアを忘れない。
カワラギ /+1art
©️ +1 art