円をなぞる
アルミニウム、ステン
No.13-A
線をなぞる
アルミニウム、ステン
No.13-B
菊池 和晃 KIKUCHI Kazuaki
[作家コメント]
世界がどう見えるまたは見えないのかは国や宗教や言語、あるいは社会構造など様々な要因によって異なる。ただし視覚や聴覚といった身体的な機能は程度の差こそあるが、多くの人々に共通して搭載された知覚装置であり、それにより認識される/されない世界は限りなく平等だ。つまり知覚の段階において私たちは皆同じものに触れてはいるが、それを何かしらの形で表現し他者に伝達することで世界は分裂していく。
そのようにして分裂した世界を私たちの身体は捉えきることができない。だから身体性を超越し「見えなくなった世界」を、再びこの身で捉えられるようにすることがアートの役目ではないだろうか。
そこで今回は円や線といった図像に着目した。これらの図像は美術史においてモチーフとして多用されてきた歴史があり、ということは「見えなくなった世界」を非常によく捉えることができる模範的なモチーフであると言えるはずだ。ただし今作はそれを誰もが目に見えるよう視覚化するのではなく、ただただ虚空に円や線をなぞるだけの装置とした。
アートもまた表現されたものであり、ともすれば安易に分裂を促すことになり得る。捉えたものを個人の身体感覚に留め、得たものの正体を対話し探るような状況を作る小さな起点になればと考えた。
[自己紹介]
1993年 京都生まれ
機械工として働きつつ、京都を拠点に美術家として活動。
仕事で使用する技法を用いて、肉体を酷使することで稼働する装置を制作し、またその装置を使い美術史から引用したイメージを生産する。
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