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︎no.01
2015 4/02(木)ー 4/18(日)

こだまの遠近法  二人展 田中広幸・野口ちとせ
Perspective Drawing of The Echo TANAKA Hiroyuki・NOGUCHI Chiose






関連イベント  4/04(土) PM 4〜  (参加費無料)

 アーティストトーク
 音のワークショップ「こだま」(音楽家/宮嶋哉行) 







田中 広幸
TANAKA Hiroyuki






互いの意思疎通のために、あるいは世界を認識し思考するために、私たちは「言葉」を用います。「言葉」(話し言葉、記された言葉)は、「意味」の透明な媒体のようにみえますが、そこには必ず「響き」や「形」があります。つまり「言葉」は、ある 
種の「物質性」を備えているということになるでしょうし、であるならば当然、そこに何らかの「抵抗」が生まれるということにもなるでしょう。私たちは表層では、この「抵抗」を補正しつつ情報を処理しているにしても、その影響は私たちの深層において、幻惑的にノイジーに、常にこだまし続けているに違いありません。

田中広幸 

「言葉」「文字」をテーマに、古書を素材とした作品に取り組む。滋賀県生まれ。
1982年初個展(ギャラリー白/大阪)。以降、個展を中心に発表(ギャラリー16/京都 1985ー1989、1994ー1999、2000ー2012、2014 伊丹市立工芸センター/兵庫2013)。その他、IBMびわこ現代絵画展(滋賀県立近代美術館準グランプリ 1988)、版画を読むー画層と色層の冒険(文房堂ギャラリー/東京 2004)、夏の思い出・森の夢ー不思議ないきものたち(ヤマザキマザック美術館/愛知 2013)など。





野 口ちとせ
NOGUCHI Chitose


通学バスに乗り込んできた男はいきなり銃で15歳の少女を撃った。女子教育を奨励したという理由で。こんなことが今現在もこの地上で起こっているのが現実です。
しかし悲しいことですがそういう現実に対して私は為す術がありません。今回の作品は「マララたちに(For Malalas)」というタイトルです。まだたくさんいるであろう彼女たちに心からエールを。

野口ちとせ 

音をテーマにした造形作品を制作、多様なスタイルの立体や平面で構成した空間を 『音・空・観』シリーズと題して発表。作品を媒体にしたワークショップでは、「音を聴く」 ための音体感を試みている。大阪生まれ。1990年初個展、 以後略毎年個展開催(楓ギャラリー/大阪、ギャラリーすずき/京都、他多数)。国内外グループ展(米、仏、韓国、ハンガリー)。現代美術国際展/南仏ペルピニャン 第3回銅賞(2006)第6回金賞(2009)第26回ソウル奨励賞(2007)
http://野口ちとせ.jp





こだまのように
その声は時を経て
再び私の耳に届く
二人の親密な会話に
日々の騒々しいニュースに

その声は過去とよばれる
あるときはシャンパンで祝われ
あるいはバスに乗った少女を傷つける

こだまの響きに世界は揺れる
この地上にもう辺境はない
辺境は時間の中にある
しだいに高まるこだまの声に
未来は耳を傾ける

 人間は言葉を使う。言葉には確定的意味が保証されているかに見える。しかし言葉の本来の姿は、響き、形態なのであって、人々がそれに向けて各々に意味を流し込む極めて不安定な伝達の中継地点でしかない。
そして田中は、そのような不安定さこそに逆説的な豊かさを見ているのである。だから田中が古本の文字を焼いたり切り刻んだりするのは言葉の否定ではない。ましてや言葉の集積物である本の破壊でも再構築でもない。田中にとって古本は豊穣な可能性の海なのだ。今回の作品「再訪」は初めて<命あるもの>が登場する。ユーモアと希望を表現した、田中の新境地を示す作品として注目したい。
 野口ちとせも人間のコミュニケーションに深い関心を持って創作をしてきた。10年以上続いている<音>シリーズは、聴くという行為を通して意識と無意識の境界を探り、関係性へと繋げていく作業のように見える。今回は対象を広げこの地球上で現在おこっている悲惨な現実に目を向けた。作品に登場する旗は国家(排他的集団)を象徴している。まっすぐ立ち上がる鉛筆群は、その圧力に抗して言葉を学び成長する子どもたち? 様々な言説•映像がこだまする中、私たちにできることは?と野口は自問する。

+1art カワラギ





ご報告
本展の作品売上額9万円の10%(振込時の換算レート$75)をマララ基金に寄付させていただきました。
この世界の構造的な格差は教育の格差でもあります。特に女子教育における差別は人類の負の遺産です。
微力ですがせめて関心を持ち続けることで未来に希望を繋ぎたいと願います。
ご協力ありがとうございました。